西中国山地自然史研究会 観察会
ブッポウソウの観察会

【案内文】
研究会では初めてのブッポウソウの観察会です.巣箱をかけている場所で,ブッポウソウの繁殖行動を観察します.育雛期のエサ運びを見たり,生態についてのお話を聞くことができます.「ブッポウソウって,どんな鳥?」の疑問を一緒に体験しましょう.
開催日時:7月3日(土) 9:30
集合場所:芸北文化ホール
準備:基本セット,双眼鏡
講師:上野吉雄・暮町昌保
定員数:30人
主催:西中国山地自然史研究会
協力:高原の自然館

【報告文】
梅雨の真っ只中で天候も悪く,参加者があるのだろうかと思いながら,受付を開始しました.13名の参加があり,またブッポウソウの飛翔も観察でき,まずまずの観察会でした.
今年3月6日に研究会で暮町先生の指導により,ブッポウソウ用の巣箱を10個製作し,4月3日に芸北地区の電柱に巣箱を架けました.しかし,今年の入巣がなく,今回の観察会は数年前に架けられた別の場所の巣箱に営巣しているブッポウソウを観察することにしました.
靄(もや)が出て視界が悪いという天候が幸いしたのか,巣箱周辺を飛翔するブッポウソウ(♂)を観察することができましたが,逆に構造色である濃青緑色や白い斑紋・朱色の嘴(くちばし)は今一歩でした.
観察を終え,文化ホールでブッポウソウの生態や食性について説明がありました.
まず,巣箱をかけるようになった経緯を上野先生が説明されました.それによると,以前は電柱が木製であったが,コンクリート柱に取り替えられるにしたがって営巣が少なくなり,それらを補完するために中国電力やNTTなどの支援により,巣箱の設置が推奨されたということです.ブッポウソウは東南アジアから「夏鳥」として日本に渡る希少種で,環境省の絶滅危惧2類,広島県の絶滅危惧1類に選定されており,県内では約150ペアと推測され,個体数の少ない種であるが,中部以北では県当たり数ペアと少なく,中国地方は比較的観察しやすいという説明がありました.ヒトに依存した繁殖場所が,ヒトによって改変され,保護すべき野鳥であることの説明でした.
県内では,三次市吉舎地区や作木地区でもその取り組みがあることが紹介され,また温井ダム周辺での巣箱架けの説明もありました.温井ダム周辺では,警報灯に巣箱が取り付けられ,繁殖期の生態や雛の成長の様子が図版を使って説明されました.ブッポウソウは巣材を運ばない野鳥なので,巣箱の底には大鋸屑を敷き,卵が転がらないようにされたそうです.餌はコガネムシ類が主なもので,薄明薄慕の時間帯に活発になり,約30秒~1分の間隔で,雛に餌を運んだ観察例を紹介されました.また,胃内容物から,プラスチツク・貝殻・プルトップなどが確認され,それらが臼としての役割についても説明されました.主食がコガネムシ類であることから,比較的標高の低い地域に営巣し,コガネムシが活動する日没後に活動する夜行性であることも納得できました.昼間はトンボ類やセミ類を捕食し,夜間にコガネムシ類を捕食するそうです.
また,暮町先生からはブッポウソウの鳴声について説明がありました.特に「声のブッポウソウ」と呼ばれるコノハズクと間違われていることの説明でした.また巣箱の入り口が80mmであること,ヤマガラやシジュウガラは27mm,スズメは30mmであることなどの生態的説明があり,古木が不足している現状では「巣箱架け」は必要な行為であることが説明されました.最後に,今回の観察会により営巣場所がわかり,日を改めて観察することにより,子育てや雛の巣立ちが観察できることを知り,野鳥保護にも興味・関心が高まりました.(ないとうじゅんいち)

【みなさんの印象に残った物】
「講義内容が面白かった」「ブッポウソウが見れた(3)」「ブッポウソウの生の姿」「ブッポウソウのくちばしが赤かったこと」「ブッポウソウのくちばしの色」

【参加したみなさんの感想(抜粋)】
「雨が降って残念でした」「双眼鏡の使い方がわかってラッキー」「楽しい」「とても勉強になりました.資料を使った先生方のご説明もわかりやすく面白かったです.」「雨が降っていましたが,ブッポウソウが観察できてよかったです.」


フィールドスコープを使って,観察開始.
約50メートルまで接近できた.

雨が降る中,ブッポウソウの濃紺色は確認できなかったが,思ったより近くで見ることができよかった!