西中国山地自然史研究会 観察会
サツキマス保全の試み

【案内文】
聖湖を海とみたてた「降湖型サツキマス」が柴木川を遡上し八幡地域に産卵にやってきます.サツキマスの生態や生息を学んだあと現地へ移動し,データを取るため,サツキマスの計測をします.その後上流部の産卵場所へ移動させるという試みを行います.寒くなる時期ですので,暖かくしてお越しください.(気象状況により座学のみの観察会となることもあります.)
開催日時:10月11日(月) 9:30
集合場所:八幡高原センター
準備:基本セット,双眼鏡
講師:内藤順一
定員数:30人
主催:西中国山地自然史研究会
協力:高原の自然館

【報告文】
毎年続けているサツキマスの産卵行動の観察会は,八幡振興会館での講義から始まりました.内藤先生が資料やプロジェクタを使ってサツキマスについての説明をされました.資料では,アマゴ,サクラマス,ビワマス,ゴギなど,サケ科魚類の分類がどのように整理されてきたのかについて,また広島県での人との関わりなど,丁寧に説明していただきました.その後,たくさんの写真やビデオを使って,様々な産卵のパターンや,産卵前後の行動について見せて頂きました.撮影の苦労話を交えての説明は,臨場感があって興味深いものでした.
しっかりと知識を詰め込んだら,いよいよ現地に出発です.今年は観察をするだけでなく,堰に遮られて遡上できないサツキマスを捕獲し,堰より上流に上っていく手助けをする計画です.現地では内藤先生がウェットスーツを,補助の田村さんがウェーダーを着込み,川に入って網を設置していきます.陽射しがあるとはいえ,10月の柴木川は寒そうです.しかし,手伝うことはできないので,ここは見守るばかりです.網を下ろしてほどなく,サツキマスがかかり始めました.20匹以上は見えていたので,メスも4匹くらいは居るはずです.サツキマスの性比は,オス:メス=8:2だそうです.最終的には24匹を捕獲し,そのうち3匹がメスでした.捕獲した全てのサツキマスについて全長・体重・性別を記録した後,コンテナで堰より上流に運び,すぐに放流しました.放流したサツキマスはすぐに散らばって行きました.後日,見回りをされた内藤先生によると,数箇所で産卵した形跡があったということです.今回の作業をしたことで,サツキマスの産卵場所が分散され,先に産み落とされた卵が,後から来たメスによって掘り起こされる事態が避けられました.ただ,見学者からは「刺し網にかかった小さな魚もなんとか殺さないようにできないものか?」との声もあり,捕獲方法の検討もしていきたいと思います.本当は,堰に魚道が付けられたら良いんでしょうね.
今回は遠くから眺めるだけでなく,重さや長さも計測したので,しっかりと近くで観察できました.サツキマスの運搬にあたっては,八幡の河野文夫さんに軽トラックを貸して頂きました.ありがとうございました.[しらかわかつのぶ]
※サツキマスの捕獲は広島県の許可をとって実施しました.

※「サツキマス保全の試み」の報告の中で,間違いがありました.お詫び申し上げるとともに,次のとおり訂正します.(2010.11.10)         【正】降湖するサツキマスの性比は,オス:メス=2:8だそうです.最終的には24匹を捕獲し,そのうち3匹がオスでした.              【誤】サツキマスの性比は,オス:メス=8:2だそうです.最終的には24匹を捕獲し,そのうち3匹がメスでした.

【みなさんの印象に残った物】
「改めてサクラマスとサツキマスの違いが理解できたこと.」「熱心な先生が好印象でした.」「皆さん熱心ですね.」「大きなサツキマス」「サツキマスのオスがとてもきれいなこと」「サツキマスの捕獲」「数の多さとオスが美しかった.」

【参加したみなさんの感想(抜粋)】
「野外での活動に大変感銘を受けました.」「楽しく勉強になりました.」「勉強になりました.」「捕獲から計測,放流の作業を興味深く見せていただきました.」「名前(サツキマス)は知っていても実物を見ることがなかったので,今日見ることができて良かったです.」「実際の保護活動が見れてよかった.」「放流した河川でまた観察したい」


スライドを使って解説する内藤先生.
現地に移動し,堰の下,サツキマスが溜まっているところで網を張る.

首まで水に浸かりながら網を引く内藤先生.
網にかかったサツキマス.

一匹ずつ,丁寧に網から外していく.
参加者は,ひたすら陸から見学.

サツキマスのメス.今回は3匹.
岸から捕獲作業を見学する.

捕獲されたサツキマス.
重さを計測する.

測定の様子を見学.
サツキマスはコンテナ2杯に入れて運んだ.

運ばれるサツキマス.