【報告文】
今回の参加者は9人.ほとんどの方が,実験地の設置や植生調査に参加されていますが,やはり何度でも現場を見る方が良いので,まずは実験地を観察することからはじめました.近ごろは雨ばかりだったのですが,この日は快晴で,気持ちよい風が吹いていました.実験地に設置した波板は,設置した時と同じ状態で残っており,配水は順調に行われていました.また,植生の変化が認められ,特に一段目と二段目では,キンミズヒキやヨモギが衰退していることが確認されました.また,波板の設置によって作られた水路では,イモリが見つかりました.30分程度の観察の後は,自然館に戻って意見交換をしました.以下に出された意見をまとめます.
【自然再生を進めていく上での問題】
1. 事業のすすみ具合がよく理解できていない.
2. 協議会以外からの積極的な提案・提言が少ないのでは?
3. 広島県やコンサルタントと自然史研究会との連帯が希薄なのでは?
4. 一般市民(地元を含む)の関心が低い.
【問題解決のための提案】
1. 事業の進行について,ホームページに議事録を載せるだけでなく,一般の市民や中学生・高校生にも分かりやすいパンフレットやホームページを作って欲しい.特に「事業を行うことがどのような意義があるのか」を示すべき.
2. 意見を拾い上げるための仕組みづくりが必要なのでは?例えばアンケート調査やホームページの掲示板,メーリングリストなど.
3. 白川を通じてのみ情報を伝達するのではなく,できれば自然史研究会の集まりに広島県やコンサルタントの担当の人に来て頂いて話を伺いたい.
4. 「どんなものができるのか」が通りがかりの人にも分かるよう,調査や実験を行っている場所に看板を立ててほしい.イメージ図があるだけでも関心が高まる.また,調査や実験についてのパンフレットが欲しい.
【水路設置実験から分かったこと】
1. 波板を設置すると斜面下側ではヨモギ・キンミズヒキなどが衰退した.
2. 波板によってできた水路ではイモリが確認された.
3. 他の陸生植物が抑制された場所でもハルガヤだけは変化せず,ハルガヤのみからなる群落となっていた.
4. 斜面下部であっても,凸部では植物群落の変化は確認されなかった.
5. ノイバラ・カラコギカエデなど,低木の生育状況に目立った変化は見られなかった.
【工法の提案】
1. 陸生草本の定着を抑制するために,配水路を設置することは有効.その際,適度に漏水するようにしておく.
2. 配水路自体が水生動物・水生昆虫などの生育環境として機能する.
3. ハルガヤについては配水路の設置だけでは除去が困難である.実際,ハルガヤと湿生植物が共存する群落も確認されている.従って,配水路設置後,時期を見てハルガヤのはぎ取りを行うなどの処理が有効なのではないか.
4. 配水路を設置した後も凸斜面では陸生植物が抑制されない.このような場所は,配水路設置後に時期を見て表土を除去するなどの処理が有効なのではないか.
5. 低木類については,工事初期に伐採し,その後も定期的に伐採を続けることで減らしていくと良いのでは.
【その他の意見】
1. 復元にあたっては,元あった植生を復元することを第一の目標にする.
2. 植裁や持ち込みなど,生物の人為的移入は行うべきではない.
3. はぎ取りなどの実験を続けて行いたい.
4. 中央部の水路は壊して,川の流れを自然に戻さなければ,本来の意味での復元にはならない.
5. 継続的に復元活動を続けていくためには,事業化も考慮しなければならないかもしれない.
「土曜日なので,参加できない」という連絡をいくつか頂きました.参加できなかった皆さん,すみませんでした.
11月7日には,芸北町民文化ホールで「八幡湿原自然再生協議会」が開催されます.こちらは,広島県が進める事業の一環で,県が行った調査結果をもとに,自然再生事業の進め方について,委員により検討される予定です.意見を発言することはできませんが,会議の内容は傍聴できますので,ご参加ください.
今回は,荒木さんに撮影していただきました.ありがとうございました.
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