西中国山地自然史研究会 観察会
カキツバタの里づくりへ向けた地域の取り組み

【案内文】
和歌などで,古くから親しまれたカキツバタも,今や絶滅の危機に瀕しています.広島県で唯一,カキツバタの自生地が残る八幡では,自生地の保全に加え「カキツバタの里づくり」という取り組みが進められています.自然の保護と地域づくり.この二つはどのように結びついていくのでしょうか?当日は,カキツバタが自生する湿原で観察をしたあと,八幡地区で行われている取り組みについて解説していただきます.
開催日時:5月29日(日) 9:30
集合場所:高原の自然館
準備:山を歩ける服装,弁当,雨具,双眼鏡,図鑑,メモ 等
講師:カキツバタの里づくり実行委員会
定員数:30人
主催:西中国山地自然史研究会
協力:高原の自然館,芸北文化ホール

【報告文】
「環境保全」というタイトルに臆されたのか,8人という少人数の観察会になりました.湿原を歩くには丁度良い人数なのですが,コーディネーターは緊張しますね.
はじめに自然館の中で昭和初期の写真や湿原の分布図を見ながら,カキツバタを取り巻く環境についてお話しました.基礎知識を頭に入れて頂いた後,「カキツバタの自生する水口谷湿原」「自生地そのものが消失してしまったあやめ池湿原」「環境が悪化しつつある私有地の湿原」の順に観察していきました.大きなテーマはカキツバタだったのですが,アズキナシ,ガマズミ,オトコヨウゾメ,ヤブデマリなどの白い花やヤマドリゼンマイの鮮やかな新葉を楽しんだり,大きなオオナルコユリの芽生えに驚いたりしながら湿原を歩き増した.どの湿原にも共通して言えることは,カキツバタが置かれている環境というのは必ずしも良いものではなく,むしろ,八幡は自然のカキツバタにとって住みにくい場所になっている,ということでした.
自生地を見学した後には,カキツバタの里づくり実行委員会が整備してきた休耕田に行きました.たくさんのカキツバタがきれいに咲きそろい,これまで見てきた3つの湿原とは全く違った様相でした.あぜ道を歩きながら周辺の植物を観察したり,植物の繁殖戦略の話をしたりしました.その後,会長の川内さんから会の敬意や今後の課題について話を頂きました.
自然館に帰ってからはそれぞれの感想を出し合いました.少人数で寂しい観察会になるかと思いきや,濃度の高い半日になりました.[し]
【参加者の感想】
「湿地は尾崎沼等しか知らなかったので,本日入った場所は新鮮でしたし,もう一度千町原を見直せたと思います.」「カキツバタは八幡湿原には欠かせない重要な植物だと再認識した.どう守るかしっかり考えたい.守り方にはいくつかのグレードを考えたい.A:現在の生育環境を維持する B:生育環境をもっと促進させる C:人口栽培により観光資源化する」「水口谷湿原のまわりからの低木の侵入が気になった.やはりアノ場所もだんだん小さくなっていくのでしょうか.」「昔と今,知ることが出来たこと収穫です.自然の姿(水口谷)に親しみを覚えました.」「当研究会もボランティアとして参加してはどうか.」

はじめに訪れたのは水口谷(むなくとだに)の湿地.ここはハンノキの下にカキツバタが見られる.
自生のカキツバタに一同感心.

ヒロシマサナエも見られた.
続いてはあやめ池湿原・・・といっても,ここは圃場整備で消失してしまった.

今は見る影もないカキツバタ自生地跡に,言葉を失う.
ここはとある私有地に成立している湿地.わずかながらカキツバタも咲いていた.

しかし,湿地の上流部は乾燥している.集水域の植林地が伐採されており,材にする際に取り去った枝が敷き詰められていた.
最後にカキツバタの里を見学した.

ちょうどボランティアの方達が作業をされていた.
休耕田を利用して作られたかきつばた畑をぐるりと一周する.

水面に浮かんでいるカキツバタの種を見ながら,植物の繁殖戦略の話.
「カキツバタの里づくり実行委員会」の会長,川内さんにお話を伺った.

取り組みの内容,ボランティアの構成などについて説明を受ける.
ボランティアの方達が楽しそうにされているのが印象的だった.

最後は自然館に戻って座談会.
カキツバタを見る眼が,少し変わったのではないだろうか.


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