西中国山地自然史研究会 観察会
湿原の観察−八幡湿原と自然再生事業−

【案内文】
八幡湿原の観察と自然再生事業地の観察を併せて行います.梅雨明けの湿原では,ハンカイソウやビッチュウフウロなど,色とりどりの花が咲きます.そんな「今も残されている八幡湿原」の植物観察を行った後,自然再生事業が行われる再生対象区を観察します.八幡湿原自然再生事業により,対象区がこれからどうなっていくのかが見所です.
開催日時:7月23日(日) 9:30
集合場所:高原の自然館
準備:双眼鏡,メモ,おやつ等.
講師:白川勝信ほか
定員数:30人
主催:西中国山地自然史研究会
協力:高原の自然館,芸北文化ホール

【報告文】
梅雨明けが待ち遠しく,雨が降ったり止んだりのなか,参加者22名で観察会が始まりました.毎年人気の湿原の観察会ですが,今回は自然館付近の水口谷湿原と,自然再生事業地である土嶽地区の湿原で観察会を行いました.講師は高原の自然館の白川と,自然再生協議会委員で土木の専門家の野村先生です.
最初に自然再生事業の概要などの話を聞いてから,自然館前を出発しました.水口谷湿原をめざして歩いていると,アサギマダラを発見しました.この蝶の食草はイケマというガガイモ科の植物であることや「旅をする蝶」という特長があると知りました.優雅に飛び,蜜を吸う姿はとても可憐でした.水口谷湿原では,前回(6/24)に行われた観察会では見られなかった植物たちが花を咲かせていました.ハンカイソウ,サワヒヨドリ,ミゾソバ,オカトラノオ,ビッチュウフウロ,チダケサシ,トモエソウ,クサレダマなどなどです.マムシグサ,ウリハダカエデ,カンボク,カラコギカエデ,イスノキ,ヤブデマリなどは,既に実をつけていました.そして昆虫も,スジグロシロチョウ,イカリモンガ,ツマグロキチョウ,ミヤマカラスアゲハなど様々なものが見られました.森の名歌手クロツグミの声も聞くことができました.この湿原はハンノキ林があることが特徴で,光が林の中にも充分にあたるので様々な植物が見られるそうです.一口に湿原といっても,環境によって生息する植物や動物が違い,現在でも変化を遂げているそうです.
そんな中,土嶽地区で八幡湿原自然再生事業が始まり,時間をかけて様々な調査が行われてきました.次はこの調査地を道路沿いから見学しました.先ほどと違い,山際にはアカマツやコナラといった木が見えます.皆さんが熱心に観察していたミズチドリ,チゴザサの可愛らしさも印象的でした.もう少し進むと少し開けた場所となり,ウスバキトンボが数多く飛んでいました.ちょうどお盆の頃にたくさん飛ぶので,ご先祖様が帰ってきたと考え,「ショウリョウトンボ」との別名があるそうです.最後に再生予定地の中を歩き,どんなところかを実際に見ることができました.湿地だったところが牧場となり,また放置され・・という変化を遂げてきたこの湿地は,牧草地にある植物(例えばハルガヤ)と湿地にある植物(例えばミズゴケ)が一緒に生息している場所でもありました.ノジコが観察できる場所があるというので行ってみましたが,今回は姿を見ることができませんでした.残念!!
再生事業は,この場所に流れている水路の水の量を調整することで,湿原の復元を計る計画です.野村先生は,「今ある自然,元の自然,どう変わるかプロセスも大切に事業をすすめたい」と話され,どのように工事を進めるかという具体的なこともお話しされました.
途中途中で白川が「ここは八幡では昔○○という地名だった.」という話をしていました.何十年も前の八幡の姿を頭の中で描くことができる,大変興味深い話でした.地球の温暖化や様々な社会構造の変化の中で,八幡湿原がどんな形で存在するべきか,考えさせられる観察会でした.[こ]

【みなさんの印象に残った物】
「大変な事業だということがよくわかった.一般市民が協力できるものは,なにか協力したいと思います.」「再生前の状況を多くの人に見ていただけた.」「再生事業が見えてきた.」「再生前の八幡原をしっかり見れた.」「ハンノキ林で立ち止まって様子を観察したこと.」「自然再生地をまわったこと.」「たくさんの花が見れました.」「チゴザサのむらさきの花.」「自然をとても近くで見て聞けたこと.」「湿原の大切さ,美しさ.」「コンクリート水路をとった後の水の流れ?」「再生地の中に入り周辺の環境が見られたこと.初めて入る.」「ミヤマカラスアゲハ!湿原のかけら.」「トンボソウ?」「植物の名前を3〜4個覚えて帰ります.」

【参加したみなさんの感想(抜粋)】
「湿地の植物が豊富なのに驚いた.」「乾燥化を確認できた.」「とにかく面白かった.」「ウスバキトンボを知ることが出来た.」「再生事業の進行につれ,今日の観察が意味を持つことが感じられるのでしょうね.楽しみに思いました.」「土嶽付近をゆっくり観察できてよかったです.常に説明の声が聞こえて,とてもよく分かりました.」「自然の奥深いことに,そして,一つの環境だけをみていては気付かずに終わっていたことが,ほんとうに参加して知ること大でした.」「私は,ただ植物(特に花)が見られればいいと思っていましたが,それが見られるのは,お世話される方のおかげと知りました.本当にありがとうございました.」「水口谷の湿原(木道を歩きながら,ハンノキ・ヨシ・その下の植物)そんな環境を取り戻すことがどんなに大変か.自然を守ることの大変さが少し分かりました.」「土嶽のいろいろなタイプの植生を一気に見る事ができてよかったです.」「ノジコが見られなくて残念.(2)」「知らないことばかりでいい勉強が出来ました.」「再生事業の説明をきっちりされたこと.」「植物と昆虫,その他の鳥などと,湿原との関わりがよく説明されていました.」「再生地の観察を毎年繰り返すことが大切だと思う.」「もっともっと湿原の事を知りたい.」「湿原のカケラたちが大きくなってくれることが楽しみです.」


集合して話をきく.今日行くのは,水口谷湿原と自然再生事業地である土嶽地区.
オオマツヨイグサやブタナなどの帰化植物が多く見られる.

カラコギカエデの実に近づいて,じっくり観察.
プロペラのような形が,遠くまでとばす役割をしている.

カモガヤやオオアワガエリなどの牧草を観察中.
木道にはいり,湿原の土壌についての話.湿原には長い長い歴史がある.

ハンカイソウを発見!ハンノキ林の中で,一番めだっていた.
一列になって進む.たくさんの花を見ることができた.

野村先生のお話を聞きながら,ちょっと一休み.
自然再生事業の工事について,お話.動物にも優しい設計になるように,との心くばり.

ハンカイソウの蜜を吸う,ミヤマカラスアゲハ. 羽の色が美しい.
この日はたくさんの種類のトンボやチョウを見ることができた.

道路沿いに咲いていたミズチドリ,チゴザサを観察.
湿原の水位で,湿原の環境が大きく左右されるそう.

道路をはさんで左右の湿原も,それぞれに特性の違った場所であることがわかった.
自然再生事業で工事する予定の水路.雨が続いた後だったせいか,水量が多かった.

自然館に戻り,最後のまとめ.自然再生事業についても,実際に現場をみることができ,多くの知識を得ることができた観察会だった.


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