西中国山地自然史研究会 観察会
早春の苅尾山トレッキング

【案内文】
記録的な暖冬のため,芸北地域でも雪が非常に少ない冬でした.例年であれば,3月中はスノートレッキングが楽しめる苅尾山も,すでに山肌が見える姿になっています.少雪の影響がどのように出るのかは,まだまだ未知ではありますが,このチャンスに早春のトレッキングに出かけませんか?
開催日時:3月11日(日) 9:30
集合場所:高原の自然館
準備:長靴,弁当,ルーペ,メモ,暖かい飲み物,おやつ 等,(あれば)かんじき・スノーシュー・クロスカントリー用のスキー
定員数:30人
主催:西中国山地自然史研究会
協力:高原の自然館,芸北文化ホール

【報告文】
今シーズンは暖冬だと言われ,気分はすっかり春なのに・・・3月半ばになっての積雪にびっくりしながらも,「スノートレッキング」にはぴったりのお天気となりました.
「冬が戻ってきたねー」「春なのか冬なのかわからないね」「やっぱり雪が積もっているのは嬉しいね」と降りしきる雪の中,13名の参加者が集合しました.
千町原の句碑のところに車を停め,登山道をゆっくりと歩き始めました.今回の案内役は上野先生です.降ったばかりの雪の上を歩くのは思いのほか楽しく,寒さを忘れて観察しました.
草原ではノウサギによるノイバラの食痕や,枯れたイタドリを見ました.イタドリは,茶色っぽく乾燥していて夏の姿とずいぶん違うなぁと感じました.進んでいくうちに降っていた雪がやみ,青空がのぞきました.ちょうどその時,苅尾山頂のブナ林の樹氷がみえて,感嘆の声があがりました.さらに空を舞う鳥の姿を発見しました.上野先生の「ハヤブサだ!!」という声にカメラを構える人,双眼鏡をのぞく人と,みなさん素早く反応され,姿が見えなくなるまで観察しました.上野先生は八幡ではハヤブサを初めて観測したそうです.森林に入り,車道に出るまでに小さな川を渡りました.そこではヒガラの鳴き声を聞いたり,ヤマドリが食べたエゾユズリハの葉を見たり,クロモジの花芽を観察しました.八幡ではめずらしいヒサカキは常緑のため,雪の中で目立っていました.車道に出て,川沿いを歩くと次々と水生昆虫を見ることができました.セッケイカワゲラの仲間,トビムシ,ユスリカなどです.時間の都合のため,途中で引き返しましたが,帰り道にヤマガラ・コガラ・シジュウカラなどの混群に出会いたくさんの鳥の鳴き声を聞くことができました.中でもコガラの「ピューピュー」という鳴き声が長く,はっきりと聞くことができました.
山麓庵に戻り,いろりの火にあたりながら今日観察したものを順番に発表しました.それからお昼ごはんを食べながら,恒例の俳句披露です.みなさんの俳句を聞いてみると,今回の観察会で印象に残ったのは「ハヤブサ」と「樹氷」だったようです.観察したものを俳句にすることで,よりいっそう心に留まった気がしました.1月と2月の観察会には雪がなく,今回やっと待ちに待った雪上での観察会でした.スキーなどを履いて歩くことはできませんでいたが,降ったばかりのやわらかい雪の上を歩く感触が心地よかったです.

長靴の 下から冷える 春の雪」[こ]

【みなさんの印象に残った物】
「臥竜山の樹氷(3)」「すっかり春めいていたのに雪になってしまったこと」「イタドリ,ノイバラ」「オオウラジロノキ」「雪の原」「ハヤブサ(2)」「ウサギがノイバラの枝の先を食べた跡(トゲがあっても動物は平気で食べれるということ)」

【参加したみなさんの感想(抜粋)】
「初めて冬の山登りに参加させていただきましたが,見るものが豊富で,楽しかったです.」「一人では気づかないことでも上野先生や他の人達と一緒にいれば気づいた.」「食痕がおもしろかった.」「もう春かと思っていたら,突然の雪でびっくりしました.」「苅尾の樹氷がキレイでした.」「雪の八幡を堪能しました.」「思わぬ雪でよかったです.」「3月中旬の雪の原がよかった.」「苅尾の霧氷が陽に映えて神々しかった.」「今年はもう雪景色が見れないと思っていましたが,よかったです.」

冬登山 囲むいろりの 温かさ

雪原に 生命の姿 見え隠れ

青空と 霧氷のかりお 冬戻る

市内から 車で2時間 別世界

青空に 走る雪ん子 春の声

ハヤブサだ あれを撮らにゃと 天の声

ハヤブサと 苅尾の樹氷 輝いて

三月に やっと出番だ スタッドレス

雪の朝 はたと悩んだ ハタネズミ

ひと休み 気配りのアメ おいしいな

春雪や 雪原にはえる ハヤブサかな

ノイバラに うさぎのおもかげ 春を待つ

ハヤブサに 見えてしまった トビだった

一瞬の 青空の下 見た樹氷

陽に映えて 苅尾の霧氷 神々しき

写真の一部を広森幹一さんにご提供いただきました.ありがとうございました.


降りしきる雪の中,歩き始める前に,案内人の上野先生よりお話を聞く.
やわらかく湿り気の多い雪を踏みながら,登山道を歩いた.

雪原より,小さな川をわたり山の中へ.
ヤマドリが食べた跡のあるエゾユズリハ

タヌキの足跡.この日は雪が降ったばかりだったので,動物の足跡が少なかった.
オオウラジロ(八幡名:やまなし)の木.冬芽がゴツゴツごつい.

みんなが見上げるその先は・・・.
ハヤブサ!大陸から渡ってきた個体だそうで,大きな体だった.

晴れ間が見え,苅尾の樹氷が姿を現した
アカマツの枯れ木にアカゲラの巣穴を発見.

足元,前後ろ,左右,頭の上と様々な方向を見ながらの観察
こちらは巣穴ではなく虫を捕るためにあけた穴.

この日はテレビの取材班も同行しており,話を聞いたり聞かれたりの観察会だった.
川沿いにはさまざまな水生昆虫がいた.小さいので近くに寄ってじっくり観察.

セッケイカワゲラの仲間.特長は2本に分かれたしっぽ.
トビケラの幼虫は落ち葉や枝,石などですみかをつくる.

苅尾の登山道を下る.乗用車の轍がひとつ.登っているのはだれだろう?
山麓のアカマツ林で,カラ類の混群に出会った.

そこまで来ていた春に,雪が覆い被さる.
カキツバタの圃場がおもしろい模様を作っていた.

今年もきれいに咲きそろうだろうか.
雲が流れる.

観察会で見たものを順番に発表した.3巡し,鳥,木,景色,動物の痕跡などたくさん出てきた.
青空に,光るつららが眩しかった.


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