西中国山地自然史研究会 観察会
千町原と霧ヶ谷湿原の観察会

【案内文】
野焼きの終わった千町原と,自然再生事業の進む霧ヶ谷湿原を観察します.千町原と霧ヶ谷は,どちらも昔は草刈り場として使われていました.それが,昭和の時代に牧場として開発され,乾燥化されたり牧草が植えられたりしました.今,広島県や地元の八幡地区,西中国山地自然史研究会などが協力しながら自然の再生を進めています.春先の様子を歩いて観察してみませんか?
開催日時:4月20日(日) 9:30
集合場所:千町原駐車場
準備:基本セット
講師:上野吉雄,小宮啓吾,佐久間智子,白川勝信
定員数:30人
主催:西中国山地自然史研究会
協力:高原の自然館

【報告文】
野焼きから2週間後の千町原で,いったい何が見られるのか,期待半分,不安半分の気持ちで観察会が始まりました.
自然館から道路を歩いて千町原まで行くと,早速,まだ葉のないノイバラの茂みの中に草原性の鳥,ノビタキとツグミがいました.火を付けた辺りから中へ入って行くと,ハルガヤなどの牧草がもう青々と新芽を伸ばしていました.防火帯として草刈りをした場所では,ゲンノショウコ,ヨモギ,ヒメジョオンなどが新芽を出していました.防火帯では,ハルガヤなどの牧草が少なく,火入れを行った場所とは,少し様子が異なるようでした.林のそばではコタチツボスミレが咲いていました.火入れを行った場所に生えている木を見ると,アカマツやイヌツゲの葉は茶色に変色していました.火の熱で茹で上がったのだと思われます.ノイバラの枝は黒く焦げていました.防火帯を通って進んで行くと,掛頭山の方向にノスリを見ることができました.さらに奥に進んで行くと,山からの水がたまって水たまりができていました.水の中には,ニホンヒキガエルやヤマアカガエル,カスミサンショウウオの卵がありました.とてもたくさんの卵がありましたが,この中で大人になれるのはほんのごく一部だと思うと自然の厳しさを改めて感じました.水たまりではない場所にもニホンヒキガエルの卵がありました.卵は一直線に伸びていて,測定したところ,長さは3.9m,約3,000個の卵がありました.お昼は句碑の周りでお弁当を食べて,午後から霧ヶ谷に移動しました.霧ヶ谷は水路に沿って水が流れ,靴では歩きにくいほど湿った状態になっていました.水のたまったところにはヤマアカガエルの卵があり,すでに孵化したオタマジャクシもたくさんいました.最後に実験地も観察しました.手作業で掘った水路は少し埋まっている箇所も見られましたが,中央には水がたまっており,ちゃんと機能しているようでした.早くも生きものたちが動き出している千町原と霧ヶ谷の今後の変化が楽しみです.[さくまともこ]

【みなさんの印象に残った物】
「湿性生物の対応の早さ」「カスミサンショウウオ,ヒキガエルの卵.」「カスミサンショウウオを見たこと」「生き物(かえる等)のたくましさ」「ベニバラウソの観察」「カエルの卵の長いのにビックリ」「カスミサンショウウオの卵(2)」「かえるの卵の数を出したこと.」「ショウジョウバカマがたくさん咲いていた事(2)」「再生事業の5年先が楽しみになって来た.」「霧ヶ谷湿原の変化の大きさ」「水がよく回っていたこと」「湿原の大きさ」「カスミサンショウウオ」「タマゴ 小さな芽」「野鳥を見ることができた」「野焼きと言っても意外と焼け残るものが多いということ」

【参加したみなさんの感想】
「芸北では見えないと思った鳥が見られました.」「年間を通して開催すれば良い」「たくさんの動植物が見れて楽しかったです.」「色々な生き物に会えたり,生き物が再生したりしたのが感動でした.」「湿原再生には,まだまだ年月がかかるなーということをあらためて痛感した」「芸北の春はまだ遠いと思っていましたが何もかも生き生きとしてやさしい色につつまれているのに安心.」「自然の中で楽しく過ごした.」「楽しかったです.」「風景が広がってよかったです.」「草原の野焼きが思ったより焼ていなかった.」「自然にふれて良かったです.」「今,まさに変わろうしている自然の姿を見れて参考になった.今後の変化に注目していきたい.」「自然再生の変化がたのしみ」「長時間だが楽しかった」「今まで参加していた場所をゆっくり見ることが出来たこと」「とてもよかった.又参加したい」「野焼きの現場をはじめて見ることができました.ありがとうございます.」「植物以外いろいろな自然があっておもしろい」


スタートしてすぐ,草原にてノビタキを観察.
野焼き後に雨が降ったので,炭を触っても手に煤が付かない.

防火帯を歩きながら観察.
もともとササが茂っていた防火帯では,様々な草が芽を出していた.

カナヘビ登場.千町原ではたくさん見られる.
見晴らしが良くなって,高台から鳥が見やすい.

ススキの株が焼けたあとに,キツネの糞があった.
薮の中にメジロの巣.昨年のものだ.

新しい,苅尾の風景.これも防火帯を作ってできたもの.
空高く,ノスリ.

山裾の湧き水に,ヒキガエルの卵塊がたくさんあった.ここにはカスミサンショウウオも産卵していた.小さいけれど,
湿地帯に落ちていたヒキガエルの卵を見つけた.仕方なく産んでしまった未受精卵だろう.長さは3m90cm,2列になっていて,10cmに約40個の卵があるので,一匹のヒキガエルが産むのは(3.9÷0.1)×2×40≒3,120個くらいだと分かった.

ノイバラの株は燃えていないけど,熱で新芽は死んでいる.
自然館に戻る前に,もう一度鳥見.

夏羽のノビタキ.
続いて霧ヶ谷の再生地を見学.どんな鳥が来るのだろう?

側溝でカスミサンショウウオの成体を見つけた.再生事業が進めば,こうして側溝に落ちてはい上がれなくなるということも無くなるだろう.
湿原再生のために掘られた水路には,ヤマアカガエルの卵塊がたくさんあった.


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